ワルキエ(Eugène Walckiers 1793〜1866)
ウジューヌ・ワルキエは19世紀前半に活躍したフルーティストで、100曲近いフルートのための作品を残しました。
が、現代ではほとんど演奏されることがなく、入手できる楽譜もわずかです。
ただ、フルートのための室内楽曲は、個性的で情熱的なものが多いようです。
フルート一本のための作品は、フルートの師・J-L.トゥルーに及ばないものの、
2〜4重奏曲はフランス音楽の最高の位置にあると評する人もいます(R.S.ロックストロ)。
(以上、『季刊ムラマツ』61所収の佐野悦郎氏の文章を参照しました)
作品
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協奏的大四重奏曲 作品46
ここで紹介する協奏的大四重奏曲は、情熱的な作品です。
同じ形態の曲としてクーラウのグランド・カルテットをすでに紹介しましたが、
それと比べると対照的です。
クーラウの曲にも情熱は感じられるのですが、それをエレガンスで覆っているような、
あるいは逆に、エレガンスの許す範囲で情熱を表現している、そんな感じを受けます。
一方、ワルキエは、エレガンスよりもまず、情熱の表現としてこの曲を書いたかのようです。
随所に「叩くように」とか「熱をこめて」のような注が散見されますし、終わりに近い部分では、
一瞬の静寂を設けて、左右のパートをパッと入れかえるようなこともしています。
ちょっとびっくりするのですが、考えてみれば、ベートーベン的な交響曲から一歩も二歩も進んだベルリオーズ『幻想交響曲』も、
1830年初演ですから、ワルキエと同時代。
フランス音楽の先進性がうかがわれます。
略年譜
・1793年 フランダース(現在はベルギー西部)に生まれる。
・1866年 没。
リンク
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山田昌尚さんの
ウジューヌ・ワルキエ
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ムラマツ・フルートの佐野悦郎氏の解説
・協奏的大四重奏曲 嬰ヘ短調 作品46
・大三重奏曲 変ホ長調 作品93の1